再会と追憶と【前編】

昔の同級生と再会すると、
誰だか一瞬分からないことがある。
老けた、太った、背が伸びたなど、
その原因はさまざま。
彼女も変わっていた。
より美しい女性になっていた。
でも、
私は一目で彼女だと分かった。
そう、何を隠そう、
彼女は私の初恋の女性なのだ。
二人の上に流れた時間は同じなのに、
一方は美しく、
そしてもう一方はうだつのあがらない阿呆のまま。
思わずじっと見てしまう。


「キレイになったね」
そんな言葉すら簡単に出てこない。
「げ、元気だった?」
おいおい。。。
もっとマシな第一声はないのか。
とはいえ、私にはそれが限界だった。
今日は、ひさびさに高校の同級生、
(といってもほんの一部だが)
が郷里で忘年会。
私はかつてなく緊張していた。
7年ぶりにあの娘に会う、
そう考えるだけで
心臓が高鳴る自分に正直驚く。
彼女とは中高ともに同じ学校に通った。
中学に入り、サッカー部に入った私。
部活帰りにふと体育館をのぞくと、
そこに、今も忘れない彼女の姿があった。
バスケ部だった彼女は、
決して大きくはないカラダを躍動させて
元気にコートを駆け回っていた。
「おい、帰るぞ」
友人のその声で我に返る。
思わず彼女に見とれてしまっていた。
その日から、彼女が私のナンバーワンになったのだった。
彼女は隣のクラスで、
私は何かと理由をつけて
そのクラスにいる友人のところに通った。
とにかく彼女の姿が見たかったのだ。
しばらくすると、
だんだん欲が出てくるもので、
何とかして彼女と話してみたいと思うようになった。
どうしたものか。
いつの世も、
目的を達成するためには
外堀から攻めるのが基本。
私も、彼女の友人と仲良くなることを試みたのだった。
彼女は同じ部活の人間と仲がいい。
私のクラスにも何人かバスケ部の女子がいた。
それまで女子とつるむことはなかったのだが、
必要に迫られた私は、隣席のバスケ部女子と
事あるごとに会話をするようになった。
その戦略が間違っていたことに気づいたのは、
すべてが手遅れになってからだった。
あの年代の人間は、
(特に女子は)
非常に惚れっぽいように思う。
対象が芸能人にしろ、先輩にしろ、不良っぽい奴にしろ。
私の隣の女子は、
頻繁に話してくる横のオトコに、
恋心を抱いてしまったのである。
【後編】へ

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